2024 オープンソースソフトウェア資金提供レポート(日本語翻訳版)
Yukio Yoshida(吉田 行男)
Masao Taniguchi(谷口 暢夫)
はじめに
本レポートは、「2024 オープンソースソフトウェア資金提供調査」1としてGitHub、Linux Foundation、およびハーバード大学の研究者たちとの共同研究のもとで行った初回調査結果をまとめたものです。この調査の目的は、企業2がオープンソースソフトウェアに資金提供、貢献、その他の支援を行う方法について、より深く理解することでした。
1 調査文書のコピーは、こちらでご覧いただけます。
2 本調査では、オープンソースソフトウェアに貢献するリソースを投入する民間企業、NGO、公共機関などの団体を「組織」と定義しています。これらの組織がオープンソースに毎年投入するリソースの規模をより深く理解することを目的として、本調査では「組織」に焦点を当てています。
- 規模
- 課題
- 組織は、なぜ、どのように貢献するのかをよく理解していますが、資金提供の具体的方法については不明な点があります。
- 運用が分散化されている場合、OSSの資金提供を計測することはさらに困難になります。
- 経験から学んだこと
- 組織の OSS への取り組みに「フィンガープリント(痕跡)」を残し、マネージャー、研究者、その他の観察者がより簡単にこの情報を収集できるようにします。
- 組織の名称でなされた貢献について、従業員が自己申告できるようにします。
- 組織内で簡潔な定期的な調査を実施し、主要な評価指標を収集することで、OSS への貢献をモニタリング パイプラインの一部とします。
- 公開されている OSS への資金提供指標とデータを共有することを検討します。
- ツールキット
- これらの調査結果を活用し、オープンソースへの取り組みの監視と洞察の改善を目指す組織向けの各種リソースを開発しています:https://github.com/sboysel/open-source-funding-toolkit
3 私たちは、調査回答を外挿して、組織主導のオープンソースへの投資総額の妥当な推計値を算出しました。開発者の賃金や貢献する組織の総人口などの基本的な仮定に多少のばらつきを許容する私たちの方法論では、年間投資額は29億ドルから101億ドルと推計されます。詳細はOSS組織の母集団への外挿を参照してください。
この調査について
- 今回の調査の主な対象者は、OSPO4、エンジニアリングおよび製品部門の責任者、Cレベルの経営幹部、および自社のオープンソースへの取り組みについて深い理解を持つその他の個人です。
- この調査は、Linux Foundationのリサーチニュースレターおよびメーリングリスト、GitHubニュースレター、ソーシャルメディアの投稿5、TODOグループ、オープンソースリーダーへの働きかけを通じて配布されました。
- 調査結果は、行動を促すものであり、オープンソースの資金提供と認知度を向上させるためのいくつかの提言を導くものでもあります。提言には、継続的な改善と貢献度の計測、組織文化の強化、影響度計測のための公共データソースへの貢献などが含まれます。
4 オープンソースプログラムオフィス。詳細は、todogroup/ospodefinition.orgとおよび「Creating an Open Source Program」をご覧ください。
5より幅広い層の方々にご参加いただくために、X/Twitter、LinkedIn、Mastodonへの投稿を通じてサーベイへのリンクを告知し、配布しました。これらの幅広いソーシャルチャンネルからの回答は全体の7%未満でした。
6 サーベイの実施の詳細と回答率については「Survey Characteristics(サーベイの特徴)」で、回答者の人口統計学的記述統計については「Respondent Characteristics(回答者の特徴)」で説明しています。
本レポートを主な調査結果から始めていきます。つづいてこれらの結果をもとに、オープンソースの資金提供に関する洞察を深めるための施策を提言します。最後に、各調査モジュールからの洞察におけるより詳細な議論6を「調査結果詳細」に記載します。
組織はオープンソースソフトウェアにどのように貢献しているのか?
この調査の主要な目的は、組織によるオープンソースへの「付加価値」を推計することです。
- 典型的な組織はどの程度オープンソースに貢献しているのか?
- サポートは各種チャネルでどのように分散されているのか?
- 調査から得られた推計値は、より広範な組織母集団に適用することは可能なのか?
私たちは、貢献価値を推計するためにサーベイ回答を利用していますが、その際には労働力の貢献(labor contribution)7と直接的な資金(direct financial contribution)8に貢献を区別するよう注意しています。そうすることで、(a)オープンソースに貢献する典型的な組織の特徴を明らかにし、(b)これらの調査結果を推計することで、すべての貢献組織がオープンソースに提供する価値の総計を算出することができます。これは、オープンソースエコシステムが組織による貢献や資金提供メカニズムを理解するためのベースラインを提供し、他の組織が自らの貢献をベンチマークする方法を提供するという点で重要です。
7 労働の貢献は、組織の従業員が有給の時間中にオープンソースプロジェクトに貢献する度合いを考慮します。
8 直接的な金銭的貢献(例:「コード以外のもの」)には、寄付、イベントのスポンサーシップ、割引サービス、トレーニング、研究など、OSSに対する資金源やその他の形態の支援が含まれます。
生の調査回答からドル単位推計値を導き出すには、企業がオープンソース作業に1年間に費やす労働時間の総数に関する情報が必要です。 調査回答から労働価値の推計値を導き出すための、推奨する推計および集計方法については、付録で説明しています。
主な調査結果
組織はオープンソースに数十億ドルを投資
10 すべての組織に対する貢献価値の推計値を拡大するには、いくつかの仮定が必要です。 主な仮定は、より広範な集団における組織の貢献の分布は、組織の従業員によるパブリックな GitHub リポジトリへのコミットの分布に従うというものです。 これらは付録で詳しく説明し、仮定を変化させることで、オープンソースに対する組織のサポートの総価値について、さまざまな妥当な推計値が導かれる可能性があることを示します。
9 調査対象の159の組織が、労働または金銭による貢献情報を提供しており、その合計額はゼロより大きいものでした。
組織全体 では、オープンソースにどれだけ貢献しているのか?
さまざまな仮説シナリオの下で、図2では、調査サンプルで得られたOSS貢献価値の推計値をプロットし、より広範なOSS組織が毎年オープンソースに貢献している総価値を推計しています。
私たちが優先する想定条件の下では、世界中の組織が毎年77億ドル(2023年の米ドル)以上をOSSに貢献しています。
では、これらの組織によるOSSへの投資の見積もりをどのように理解すればよいのでしょうか。これまでに多くの研究が、(1)オープンソースの総価値、または(2)この価値を生み出すために必要な投資規模のどちらかに価値を見出そうとしてきました。 これらの研究結果は、私たちが導き出したオープンソースに対する組織の貢献価値の見積もりを位置づけるのに役立ちます(図3参照)。
- Blind他(2021)は、EU内の企業が2018年にオープンソースに10億ユーロを投資したことを明らかにしています11。
- Hoffmann、Nagle、Zhou(2024)は、コアな OSS インフラをゼロから再開発するための一時的なコストは 41.5 億ドル(2023 年の米ドル)が必要になると推計しています。
- Korkmazら (2024)は、2019年の米国におけるオープンソースへの総投資額は378億ドルに達すると推計しています12。
- コミッターのメールアドレスから組織と関連付けられたGitHubのコミットデータによると、利用可能なデータの最後の年において、組織は公開リポジトリに約800万件のコミットを行いました。年間の総貢献額77億ドルを時給45ドルで換算すると、従業員はオープンソースの作業に対して支払われる21.4時間ごとに1件のコミットを行っていることを意味します。
- この調査で得られた総価値(17億ドル)を、世界中の貢献組織の推計数(21,000)に単純に当てはめると、毎年2,250億ドル以上が投資されていることになり、これは米国のソフトウェア開発者の総賃金とほぼ同等の価値であることを意味します。(労働統計局2024)
11 さらに著者は、この投資により、労働総生産(GDP)がさらに650億ユーロから950億ユーロ増加すると結論づけています。
12 今回の調査とは著しく異なる点として、著者は米国関連の開発者による760万の公開リポジトリ全体への投資をしていると考えています。
13 通常、従業員によるオープンソースプロジェクトへのコミット回数を数えることで行われます。
これまでの研究では、公開されているコントリビューション情報13を基にしていますが、本レポートの調査結果は、各組織が自ら報告したオープンソースへの貢献推計値から導き出されています。
- 調査から得られた貢献価値をすべての組織に拡大するにはどうすればよいでしょうか?
- 私たちの調査は、オープンソースを支援する可能性が最も高い組織を対象としていました。単純に、サーベイで示された総額を、OSSに参加する組織の総数と一致するように拡大すると、貢献の総価値を過大評価する可能性が高いと思われます。この偏りを修正するために、私たちの調査が大規模な貢献者に偏っている可能性があるという事実を考慮して、キャリブレーションされたブートストラップ手順を使用しています。私たちの推計方法については、付録で詳しく説明しています。
サーベイ回答者はどの程度貢献しているのか?
図4では、該当する質問に回答した各サーベイ回答者の労働および金銭的貢献価値の算出値をプロットしています。
112人の回答者が、彼らの組織のオープンソースへの労働による貢献のレベルに関する情報を提供しました。133人の回答者が、彼らの組織の金銭的貢献のレベルに関する情報を提供しました14。これらの分布に関する統計の概要は表1に示されています。
14 192人の回答者が、労働または金銭による貢献について何らかの情報を提供しました。しかし、これらの回答者の一部は、私たちの実証的手法を用いて適切な貢献額を算出できるだけの十分な情報を提供していませんでした。159人の回答者は、金銭または労働による貢献価値を算出するのに十分な情報を提供しました。
ソース | カウント | 平均 | 標準偏差 | 最小値 | 中央値 | 最大値 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
労働 | 112 | $12,936,973 | $63,175,021 | $2,592 | $345,600 | $622,080,000 | $1,448,940,960 |
金銭的 | 133 | $1,796,592 | $7,333,217 | $600 | $175,000 | $77,850,000 | $238,946,678 |
回答した組織の中央値では、年間52万600ドル(2023米ドル)の価値をOSSに貢献しています。
- この価値のうち345,600ドルは人件費であり、これは4 FTEに相当します15。
- 175,000ドルは直接的な金銭による貢献です。
15 Full time employee、すなわちフルタイム従業員に関係する年間コスト。私たちの労働価値推計方法では、1FTEは1人のフルタイムソフトウェア開発者に支払われる年間給与に相当します。
回答者全体では、毎年17億ドル(2023米ドル)をオープンソースに貢献しています。
ソースとシンク(sources and sinks)
オープンソースの資金提供にはどのような手段がありますか? 組織はこれらのリソースをどこに流しているのか?この調査では、組織からオープンソースへのリソースの流れをもう少し詳しく分析することができます。図5では、回答者の貢献を労働力と金銭に分けてプロットしています。図5は、組織によるOSSへの貢献価値の圧倒的な割合が労働力によるものであることを示しています。
図6と図7では、労働による貢献と金銭的貢献をさらに細分化しています。
注:一部の組織では、請負業者への労働力と請負業者に支払われた金額の両方を報告している場合があります。二重計上の問題を避けるため、貢献価値の総額を推計する際には、請負業者の労働力を除外することにしています。
興味深いことに、かなりの割合の資金提供が請負業者に向けられていることから、オープンソースへの貢献作業は「社内」または専門家に委託されていることを示唆しています。金銭的貢献を特徴づける調査回答は、主要なオープンソース非営利団体の予算配分とも一致しています。図7に示された資金源の配分は、2023年のLinux Foundationの支出割合(The Linux Foundation 2023)と一致しています16。
組織の貢献には、その資金提供の具体的情報について盲点(ブラインドスポット)が存在
組織は、なぜオープンソースソフトウェアに貢献しているのかについて明確な意識を持っていますが、この投資の価値を詳細に説明することはできないようです。これは、資金提供の詳細に関する質問に対する回答率の低下から明らかです。
オープンソースソフトウェアプロジェクトにどのような貢献をしているかについて情報を提供した325の回答組織のうち;
- 55%が「あなたの組織はOSSに総額でどれくらいの資金援助を行っていますか?」という質問に回答しました。
- 50%が「あなたの組織でOSSに従事している従業員のうち、OSSに従事している割合はどのくらいですか?」という質問に回答しました。
- 46%が「あなたの組織でOSSに従事している従業員は何人ですか?」という質問に回答しました。
- 32%が「あなたの組織は、さまざまな OSS 対象(プロジェクト、メンテナ、Foundation など)にどれだけの財政支援を行っていますか?」という質問に回答しました。
- 22%が「組織の予算のうち、OSS に割り当てられている割合はどのくらいですか?」という質問に回答しました。
- 20%が「あなたの組織の従業員が OSS に費やしている総労働時間はどのくらいですか?」という質問に回答しました。
その規模と過少申告の可能性が主な原因となり、OSSへの労働による貢献は、あなたの組織にとって重大な盲点となります。
回答者は、労働面での貢献と比較すると、組織の直接的な金銭的貢献についてより詳しく知っているようです。金銭的貢献または労働価値について何らかの推計値を提示した192人の回答者のうち;
- 67%は両方の情報を提供しました。
- 33%は金銭的情報のみを提供しました。
- 1%は労働情報のみを提供しました。
運営が分散化されている場合、貢献度の計測はより困難に
- 回答者は、正式な承認ルートがほとんどないことや、その他の貢献への障害を挙げています。これは、ある意味でありがたいことでもあり、困ったことでもあります。オープンソースソフトウェアの作業を奨励しながら、従業員が何に取り組んでいるか(報告目的)をある程度把握するにはどうすればよいのでしょうか。
「私は大きな研究大学で働いています。プログラマーが様々な分野で働いているので、大学がオープンソースにどのように貢献しているのかわかりません」
- 回答した組織の64%はOSPOを持っていません(7%は持っているかどうかわからないと回答)。
- 従業員のメールアドレスとして固定アドレスの使用を義務付けている組織は全体の3分の1未満であり、3分の1強が強く推奨しています。
- 非財務的、非コード的な重要な貢献は、依然として計測されていない可能性があります。
- フルタイムまたはパートタイムの従業員と比較すると、回答者は(当然のことながら)契約社員がオープンソースに費やしている労働時間について、比較的よく知らないようです。一方で、この調査では、契約社員への支払いが、組織による金銭的貢献の最大の割合を占めていることも明らかになっています(図7参照)。
「私たちは資金提供者であり、直接的な貢献はしていません」
「私たちの開発者はフリーランスのギグワーカー(gig worker:インターネットなどのプラットフォームを通じて単発の仕事やプロジェクトを請け負う労働者)です」
提言
調査結果から得られた洞察を活用し、オープンソースへの投資をよりよく監視したいと考える組織向けのさまざまなリソースを開発しました:https://github.com/sboysel/open-source-funding-toolkit
組織の OSS への取り組みを公開識別子(public identifiers)で署名し、マネージャー、研究者、その他の閲覧者がこの情報をより簡単に収集できるようにする。
- 従業員が組織のメールアドレスを使用してコミットできるようにするポリシーを採用する。
- OSS への取り組みをパブリックなバナー(public banner)の下に統合する17。
- 組織の役割を対外的に説明する際にOSS の使用と貢献への期待を明確にする18。
17 例えば、オープンソースプロジェクトをGitHub Organizationの下に配置します。
18 求人情報など。
組織の名のもとでされた貢献を従業員たちが自己申告できるようにする。
- 従業員が、自分の貢献を時間で記録し、公表することを奨励する19。
- オープンソースへの貢献に対しインセンティブ、表彰、またはアワードを提供する。これらは低コストで自己申告を促進することができる。
- 採用戦略の一環として、オープンソースに貢献する可能性を提供、周知することで人材を惹きつける。
19 例えば、Harvard’s Institute for Quantitative Social Science (IQSS) は、関連組織が取り組んでいるオープンソースプロジェクトをGitHubの公開リポジトリに追加することを奨励しています。
重要なメトリックを収集するべく組織内で定期的に簡便な調査を実施することでOSSへの貢献を監視パイプラインの一部にする。
- シンプルかつ迅速に。幅(width)よりも広さ(breadth)を重視する。
- 従業員が貢献したOSSの労働量に特に注意を払う。
「OSSへのパブリックな資金提供」の指標(public OSS funding index)の共有を考慮する20
20 組織横断でのコードコントリビューションの存在を示す「パブリックな指標」の例として、オープンソース貢献者インデックス(OSCI)があります。
- 「パブリックな指標」は、組織のオープンソース投資について「どこで」「何を」「どれだけ」を追跡するシンプルなリストとなりうる21。
- こういった指標は貢献レポートの標準化を強化するのに役立つ。
- また、そういったデータへのパブリックなアクセスや透明性への意識向上を促す。
21 リソースについては、私たちの資金提供ツールキットをぜひご確認ください。
調査結果詳細
本調査では主な調査結果で取り上げた、組織によるオープンソース投資の規模推計だけでなくコードおよびコード以外の貢献、動機やインセンティブ、投資の優先順位付け、組織のプロセスなど、幅広い質問を回答者に尋ね、さらなる掘り下げを行いました。本セクションでは、調査から得られたより詳細な洞察について説明します。まず、調査の構成と実施について、次に、調査で得られた回答組織の特徴について説明します。最後に、コード貢献、コード以外の貢献、動機とインセンティブ、および投資の優先順位付けと意思決定という、各調査モジュールの調査結果を要約します。
サーベイの特徴
表2は、OSS資金提供調査の概要をまとめたものです。
項目 | 値 |
---|---|
回答総回答数 | 501 |
調査開始日 | 2024年6月27日 |
調査終了日 | 2024年10月17日 |
調査形式 | オンライン (Qualtrics) |
質問数 | 47 |
アウトリーチ | 直接の連絡(メール)、ターゲットグループ(GitHubブログ、LFニュースレター)、幅広いチャンネル(LinkedIn、Twitter/X、Mastodon) |
著者たちの共同開発による本サーベイでは、5つのモジュールにわたる47の質問を設定し22、所要時間を19分と想定しました23。 オープンソースに最も貢献している可能性が高い組織を対象にサーベイを実施する一方で、サーベイのリンクは一般にも公開しています24。配布チャネルとして、直接の電子メール連絡、ターゲットを絞ったニュースレター、ソーシャルメディア投稿などを用いました。サーベイは2024年6月27日よりQualtricsを通じてオンラインで実施されました。2025年9月25日までに、501件の回答を収集しました25。回答の58%はLinux Foundationからの働きかけによるもので、24%はGitHubチャンネル、18%はその他のチャンネルからのものでした26。
22 調査モジュールには、「コード貢献」、「コード以外の貢献」、「動機とインセンティブ」、「投資の優先順位付けと意思決定」、および「回答者の記述」が含まれます。
23 初期のフィードバックでは、初回調査は長すぎるとの意見が寄せられました。今後の OSS 資金提供調査では、回答率を向上させるために、調査を簡素化する必要があります。
24 回答者は18歳以上であることを確認するだけで済みました。
25 回答者に質問をスキップしたり、回答を空欄にしたりすることを許可したため、回答率は質問によって異なります。
26 その他のチャネルには、LinkedIn、X、Mastodonでのソーシャル投稿、および直接の電子メールによる連絡が含まれます。ソース別の回答率の差は、おそらくアプローチするタイミングの違いから生じています。
回答者の特性
調査に回答したのはどんな人でしょうか?回答者に一連の属性に関する質問をして、どのような組織がサーベイの対象となっているかを把握しました。
大まかに言えば、我々のサーベイでは以下の3種類の組織を捉えています:
- OSSへの資金提供を目的として設立された非営利団体/政府機関
- OSSの開発に重点を置く小規模企業やスタートアップ
- 幅広い戦略の一環として開発を行う大規模な企業
図9は、この調査があらゆる規模の企業から意見を収集していることを示しています27。図10と図11では、回答者を業種と業務分野別に分類しています。回答者の大半(87%)は、ITおよびコンピューティング関連の営利企業です。非営利団体と学術機関は、回答者の13%を占めています。図12は、回答者のオープンソースの利用状況を示しており、ほとんどの組織がオープンソースを利用している一方で、ごく一部の組織が主要なオープンソースプロジェクトのプロジェクト管理やガバナンスに影響を与えているという考え方を裏付けるものです。図13は、地域のカバレッジが北米とヨーロッパに偏っていることを示しています28。最後に、図14は、配布対象の選択と一致して、回答者の31%がOSPOを所有していることを明らかにしています。
27 小規模な企業の代表は、規模を推計する上で心強く、OSSの主要な貢献者を過剰にサンプリングしているのではないかという懸念をいくらか軽減してくれます。
28 OSSの資金提供に関する今後の調査では、十分にカバーされていない地域を調査対象に含めることが望ましいでしょう。
OSSに参加している組織の同様の研究(Hendrick and Santamaria 2023)と比較すると、この調査のサンプルは、
- 小規模企業からの回答が多くなっています。
- OSPOからの回答がやや少なくなっています。
- 米国、カナダ、EU以外の地域からの回答が大幅に少なくなっています。
コードへの貢献
組織はどこにオープンソースコードを貢献しているのか?
- 組織は、直接管理しているリポジトリに貢献することが最も多い(38%)ですが、それに次いで多いのは上流依存関係にあるプロジェクト(34%)が僅差で続きます。
- ほとんどの企業(39%)は毎日貢献しており、60%の組織は少なくとも週に一度はコードを貢献しています。
- 企業規模とコード貢献の頻度との間には、強い相関関係はありません。
- サーベイ回答者の一部は、リソースの制約や他の目的への取り組みを理由に、貢献の頻度が少ないと報告しています。
「私たちが貢献することは滅多にありません。私たちは非営利団体です。もし資金が潤沢であれば、コミュニティに還元するために多くのリソースを割り当てることができるでしょうが、私たちはすでに、十分に支援されていないコミュニティに貢献しています」
組織はどのようなオープンソースコードへの貢献を行っているのか?
- 組織は、ガバナンスの提供(7%)、サイバーセキュリティ監査(6%)、法的アドバイス(3%)の提供よりも、バグレポート(19%)、機能(19%)、一般的なメンテナンス(18%)、ドキュメント(16%)の形で貢献する可能性が高くなっています。
セキュリティは、バグ報告や一般的なメンテナンスを通じてある程度の注意が払われているかもしれませんが、包括的な監査は組織にとって重点項目ではないことは明らかです。
組織では、誰がオープンソースコードに貢献しているのか?
- 開発者またはソフトウェアエンジニア (40%)に次いで、コミュニティ/開発者支援者(17%)とIT/システム管理者/DevOps担当(11%)が貢献する可能性が2番目と3番目に高いです。
組織では、従業員がオープンソースソフトウェア プロジェクトに貢献するインセンティブをどのように提供しているのか?
- 従業員に貢献を促す方法については、組織によってさまざまです。
「すべての従業員に対する契約書でオープンソースへの貢献を明確に許可する条項を設けています。一部の従業員は、オープンソースのみを取り扱っています」
「(自組織では)毎年最も貢献度の高い社員にアニュアル カンパニーアワードを授与しています」
「...私たちは、開発者たちがキャリアを伸ばす方法として、OSSに貢献することを奨励しています」
「私たちは実際にはそれ(オープンソースの貢献)を求めていません。オープンソースポリシーを改善し、より多くの人々に興味を持ってもらうよう努めていますが、それを求めるのはエンジニア次第です(エンジニアの一部にしか最適化されません)」
- OSS 関連の業務は、従業員の職務全体 (31%) よりも職務の一部 (52%) である可能性が高くなります。
- 組織は過剰な貢献に対する「規制」を挙げているわけではないようです。ほとんどの従業員は、明確な承認なしに(38%)またはコア業務に支障をきたさない限り(33%)貢献することができます。
- 大規模な同業者と比較すると、中小企業では、OSS 作業がフルタイム業務である従業員がいる可能性がはるかに高くなります。
- ほとんどの組織(77%)では、通常の給与以外にオープンソースへの貢献に対して追加の支払いを行っていません。
組織において、許可されていないコード貢献活動があるか?
- ほとんどの組織 (43%) は、自社で明確に禁止されているコード貢献の種類をレポートしていません。
- 報告している場合、特定のライセンス要件29のあるプロジェクト(25%)や競合他社がメンテするプロジェクト(10%)への貢献は禁止される可能性が高いようです。
- その他のコントリビューションの障壁としては、複雑なCLA、官僚主義的なプロジェクト(bureaucracy)、競合他社がメンテするプロジェクトなどがあります。
29 例えば、コントリビューターライセンス契約(CLA)など。
「企業の知的財産を公開することになる貢献」
「官僚主義が強すぎるプロジェクトへの貢献」
「複雑すぎるCLAのあるプロジェクトへの貢献」
金融サービスなどの規制産業の一部の組織では、オープンソースへの貢献を完全に禁止しています!
組織では、オープンソースプロジェクトに従事する従業員に対しどのような承認プロセスを設けているか?
- ほとんどの回答者は、OSSプロジェクトに取り組むための厳格な承認プロセスはないと述べています。貢献に明確な承認を必要とする組織は19%のみであり、貢献を事前に承認されたプロジェクト群に制限している組織はわずか11%です。
「明確なポリシーはありません。『疑問があれば、私たちに相談してください』という感じです」
「彼らが望んでいるのは機能だけなので(そういったプロセスは)あとから考えることになります。知財管理のケースのようにどれだけ影響があるか、その重大性については十分検討されていません」
- 従業員が貢献できる OSS プロジェクトについて、小規模な企業では制約が少ない傾向にあります。
- 厳しいライセンス要件のある OSS への貢献については、大規模な企業ほど懸念が大きいようです。
- 貢献の制限は、貢献のレベル自体によっても異なる可能性があります。
「従業員は、事前の承認なしに軽微なコード変更(バグ修正、改善)を行うことができます。より大規模な貢献やプロジェクト全体については承認が必要です」
「幅広いライセンス/プロジェクトのリストと既知のCLAに記載されている限り、どのプロジェクトにも簡単な貢献を行うことができます」
- 回答者の何人かが、レビュープロセスの改善に積極的に取り組んでいると答えたことは喜ばしいことです。
「現在、明確な承認プロセスはないが、そのようなプロセスを確立する方向にあります」
- 提言
- コントリビューションのポリシーを明確にし、従業員に推奨することで貢献に関する摩擦を軽減します。
- 同時に、従業員のオープンソースへの投資の規模を推計できるように、監視または自己報告フレームワークを導入します。
- 複数のメリット:貢献を奨励し、ビジネスリスクを軽減し、貢献に関する見識を深めることができます!
「従業員は、勤務時間中にパブリックなプロジェクトに貢献する前に、トレーニングを完了し、自分のGitHub IDを会社の組織にマッピングしなければなりません」
組織では、従業員がオープンソースプロジェクトに貢献することを許可する前に、特定のビジネスリスクを評価しているか?
- ビジネスリスク(重要度の高い順):セキュリティ(20%)、競争優位性(16%)、特許リスク(15%)、技術的負債(13%)、外部コードへの依存(13%)
- しかし、16%の組織は、従業員によるオープンソースへの貢献を許可するかどうかを決定する際に、ビジネスリスクは考慮しないと回答しています。
- OSSに割り当てられる作業時間の分布は3つのモードに分かれます。OSSに従事する従業員は、通常、作業時間の0~15%、50%、100%のいずれかで従事しています。
- 残念ながら、一部の組織では過剰なオープンソースへの取り組みを無駄遣いとみなしたり、その他の点で方向性がずれているとみなす可能性があります30。
30 このような考え方は、特に個々の組織の視点から、オープンソースへの投資のROIに対する理解を深める動機付けとなります。
「大量の無駄が発生するリスク。応対やプルレビューなど」
「サポートをしなければ放棄される重要なプロジェクトのサポート」
コード以外の貢献
組織では、コードの貢献以外にどのような形でオープンソースを支援しているか?
- 回答者がコード以外の貢献を行っている場合、そのほとんどが寄付(21%)31、Foundationへの参加(17%)、イベントのスポンサーシップ(14%)を通じて行われる可能性が最も高いです。
- 回答者が挙げたコード以外の支援の形として、オープンソースのリサーチ活動へ支援することも挙げられます。
31 寄付のカテゴリーをさらに細分化すると、11%の組織がFoundation、非営利団体、一般ファンドに寄付しており、10%の組織がメンテナやソフトウェアプロジェクトに直接寄付しています。
「オープンソースコードに貢献するリサーチプロジェクトへの資金援助」
「ワーキンググループのホワイトペーパー/ユースケースなどへのスポンサリング」
- 講演者の提供は、資金援助(22%)やマーケティング(19%)、ロジスティクス支援(15%)、コンテンツキュレーション(14%)と比較して、最も一般的なイベントスポンサーシップ(30%)の形態です。
- 組織がファウンデーションを支援する場合、最も多く挙げられる理由は、そのファウンデーションが自社にとって有益なオープンソースプロジェクトを支援しているから(36%)というものでした。
- 企業規模とコード以外の貢献形態との間には、強い関係はないようです。。
- コード以外の貢献は、コードの貢献と比較すると、はるかに散発的で頻度が低いです。
イベントに講演者を派遣することの価値とは何でしょうか? ロジスティクス支援やコンテンツキュレーションでしょうか? 回答者がコード以外の貢献レベルに関する質問に回答する際に、これらのサービスを考慮に入れなければ、この潜在的に価値のある貢献形態が調査で過小評価される可能性があります。
コード以外の貢献形態で、明確に禁止しているものがあるか?
- 通常、組織はコード以外の貢献活動を明確に禁止することはありません。回答者の48%は、何も禁止されていないと回答しています。
モチベーションとインセンティブ
組織がオープンソースを支援する主な動機は何か?
- オープンソースへの貢献の主な理由として挙げられたもの:プロジェクトの持続可能性への懸念(10%)、還元 (10%)、イノベーション (9%)
- これらの動機を企業規模別に分類すると、戦略的動機がより明確になります。
- 小規模組織は、プロジェクトの持続可能性への関心とプロジェクトへ還元する願望を示しています。
- 大規模な組織は、リスク軽減、標準の推進、相互運用性重視しているようです。
「オープンソースへの貢献がショーケースとなって、コンサルティング案件につなげるのに役立ってくれます」
組織のオープンソースへの支援意欲を妨げる要因にはどのようなものがあるか?
- 人的資源(26%)または資金(20%)の不足は、組織が貢献する上での最も一般的な障害として挙げられています。
- 一方で、組織は、リソースがあればどのように、またなぜ貢献するのかを明確に理解しているようです。回答者の38%は、どのように貢献すればよいか不明確であることが、何らかの障害となっているわけではないと述べています。
言い換えれば、組織は貢献すべき理由や方法については明確に理解しているものの、より積極的に参加するためのリソースが不足する傾向にあります。
- 半数以上の組織が、OSS に貢献した従業員に報酬を与えたり、表彰したりしています (少なくともある程度は)。
- 小規模な企業では、従業員の OSS 貢献に対して報酬を与えたり、表彰したりする傾向が高いようです。
- 83%の組織が、OSSへの貢献は採用候補者にとって少なくともある程度重要であると回答しています。
- OSSに対する組織のサポートは、大企業よりも小規模な企業の採用候補者にとってより重要であるようです。
業務に不可欠なオープンソースソフトウェアに対し、組織はどの程度コードの貢献を行なっているか?
- 小規模企業は、業務に OSS のサポートが極めて重要であると感じているが、大規模企業ではやや重要であると考えています。
オープンソースを支援するにあたり、免税措置は考慮要素となるか?
- 免税措置は貢献の動機としてはそれほど強くないようです。回答者の48%は、貢献の決定において免税措置は「まったく役割を果たさない」と述べています。
投資の優先順位付けと意思決定
- 回答者は、プロジェクト開発のあらゆる側面を重視する持続可能なオープンソースの資金源の必要性を強調しています。
「私たちは長年にわたり、いくつか人気があり、利便性の高いオープンソースツールを作成してきました。これらのプロジェクトの基本メンテナンスのための資金提供は常に苦労の連続です。資金源は新しい機能にはお金を払いたがるのですが、問題の解決や基本メンテナンスにはお金を払いたがりません。Linux Foundationが、このようなプロジェクト向け資金提供のルートを持っていたら良いと思います」
- 支援に関して言えば、組織は OSS 請負業者に対して最も直接的な財政支援を行う傾向にあります32。
- オープンソースに割り当てられている組織の予算の割合の分布は二極化しており、組織は通常、10%未満または90%以上をオープンソースのサポートに費やしています33。
- 57%の企業が、求人広告に OSS 関連の期待を少なくともいくらか記載しています。
- 一般的に、特定の労働力または財政的貢献に関する質問の回答率は、他の質問と比較してかなり低くなっています。
32 請負業者の次に、組織は(多い順に)報奨金プラットフォーム、財団、コミュニティ、プロジェクト、および個々の保守者を支援しています。
33 これは、営利企業と非営利企業の両方を代表する回答者と一致しています。
サーベイ回答者からのさまざまな意見
「特に貢献したいと考えているスタートアップ企業にとっては、需要のあるコントリビューションに対して財政的な支援をしてくれるスポンサー付きプログラムについてより多くの情報が得られることはとても素晴らしいことです。企業スポンサーを募り、その企業がオープンソースプロジェクトに多額の寄付を行うプロジェクトは数多くありますが、その一方で、スポンサー企業と関係のない貢献者にはほとんど何も支払われないプロジェクトも数多くあります。ですから、より公平な取り決めがあれば、有益な貢献がさらに頻繁に行われるようになるでしょう(特に、私は自分の会社の事業のために積極的に収益源を確保しながら、オープンソースに時間を寄付するというバランスを取らなければなりません)」
「今回のこの調査には、オープンソースをプロフィットセンターと見立てて測ろうとするバイアスがかかっています。オープンソースはあくまでツールであって、そのような会計処理にはなっていません。私はドリームワークス・アニメーションに勤めていたのですが、そこでは当社のアニメーション用ソフトウェアはすべて社内でLinux用に作成されていました。もし『ヒックとドラゴン』がどれだけの利益を上げたか、Linuxの使用がどれだけ映画のヒットにつながったかを尋ねられた場合、答えられるでしょうか?ドリームワークスは競争優位性を確保するために、すべてのツールを内製しています。私が書いたコードはオープンソースとして公開することを会社から許可されましたが、パテントトロールによる厄介な訴訟を恐れて私が自社名義でオープンソースにコントリビュートすることを会社から禁止されていました」
「最近では、多くのオープンソースコミュニティや組織が門番的になっていて、参加が制限されているようにも感じます」
付録
労働(labor)の貢献価値の推計
私たちは、サーベイ回答を基に、組織による OSS への労働力の貢献価値を2つの方法で推計することができます。
- 組織の従業員が1年間にOSSに貢献した労働時間を直接的に尋ねて得られた回答を用いる
- (a) 組織の従業員がOSSに貢献した人数、(b) それらの従業員がOSSプロジェクトに貢献するために費やした時間の割合、それぞれを尋ねて得られた回答を用いる
労働時間に関する直接的な回答は推計に頼る部分が小さいものの、2番目のアプローチの方が回答率ははるかに上回りました。そのため、私たちは次の式を使用して、単一の組織の労働貢献価値を推計しました。
このやり方を表3で「方法3b」とします。
前提条件:
- 48 週間の就業週と週 40 時間(年間 1920 時間)の就業を仮定。
- Hoffmann、Nagle、Zhou (2024)に従い、2023 年のソフトウェア開発者の世界的な時間当たり賃金を 45 ドルと想定。
- 組織内の何人の従業員が OSS に貢献しているかという質問に対しては、回答者はいくつかの区分された範囲(例えば、1~5 人、6~10 人など)から選択できる。 範囲が限定されている場合はその中央値を、限定されていない場合は最小値を、指標のポイント推計値として使用する。 例えば、回答カテゴリーが「1~5 人」の場合は 3 を使用し、カテゴリーが「5000人以上」の場合は、(控えめに) 5000 を選択する。
- 方法3bで説明したように、フルタイムおよびパートタイムの従業員のみをカウントし、従業員が貢献に費やす時間の割合は、組織が回答した値がグループの平均値であると想定する。
表3は、回答を寄せたすべての組織における年間OSS労働貢献価値の合計に関する代替推計値を示しています。この調査では、組織の労働貢献について複数の方法で質問したため、労働価値の合計を推計する代替方法をいくつか評価しています。
- 方法1:報告された労働時間のみを使用する。
- 方法2:報告された労働時間が存在する場合はそれを使用し、そうでない場合は OSS に貢献する従業員数と OSS に費やす時間の割合を使用する。
- 方法3:OSS に貢献する従業員数と OSS に費やす時間の割合のみを使用する。
方法 | 回答数 | 値 |
---|---|---|
方法1:報告された年間労働時間 | 47 | $9,117,000 |
方法2a: 正社員 | 61 | $475,341,138 |
方法2b: 正社員およびパートタイムの従業員 | 79 | $670,298,751 |
方法2c: 正社員、パートタイム従業員、契約社員 | 79 | $677,818,143 |
方法3a:正社員 | 88 | $967,495,968 |
方法3b: 正社員およびパートタイム従業員 | 112 | $1,448,940,960 |
方法3c: 正社員、パートタイム従業員、契約社員 | 112 | $1,723,433,760 |
私たちは、方法3bによる推計値を推奨します。その理由として、(1) データは一貫した質問セットへの回答から得られ、(2) 請負業者の労働時間を除外することで二重計上を避け、(3) 回答率は報告された労働時間よりも高かったことが挙げられます。
オープンソースソフトウェア(OSS)組織の母集団を推計する
- 貢献価値の人口分布は、組織に所属するコミットの公開リポジトリへの貢献の観察された分布に従います。
- オープンソースに労働力を提供している組織の人口の10%は、財源も提供しています。
調査で得られた貢献価値を拡大して組織貢献額全体を推計するには、まず、この調査が大規模な貢献者により偏っている可能性があるという事実を考慮する必要があります。実際、調査による労働価値のおよそ半分は、1人の回答者によるものです。この複雑な問題に対処するために、較正ブートストラップ法(Rao, Wu, and Yue 1992; Canty 1999)を使用しています。単純に、調査で把握された総価値(17億ドル)を世界中の貢献組織の推計数(21,000)に一致させるように拡大すると、毎年2250億ドル以上が投資されていることになり、これは米国のソフトウェア開発者の総賃金とほぼ同額になります(労働統計局2024)。私たちの主な仮定は、貢献価値の人口分布は、組織に所属するコミットの公開リポジトリにおける分布を観察したものに従うというものです。
34 これは、公開時点で入手可能な組織に一致するデータとしては最新かつ完全な1年分です。
35 例えば、jdoe@microsoft.com
という電子メールがMicrosoftに関連付けられている著者がコミットを行っています。
まず、2022年4月から2023年4月までの期間における、GitHubのパブリックリポジトリに対する組織関連のコミットのサンプルから始めます34 。個々のコミットを組織に関連付けるには、そのコミットの著者のメールアドレスのドメインを組織のドメインとリンクさせます。 その従業員が雇用主を代表してオープンソースに貢献しているという前提に基づいています35。次に、このサンプルを基に、毎年どれだけの組織がオープンソースに貢献しているかを概算します。これは、年間コミット数(X)を閾値とし、過去1年間に合計(X)のコミットを行った企業(N)の数を数えることで数値化されます。そして、この(N)を母集団の規模として使用します。
次に、この (N) Rrms の分布とその年間コミット総額を、ブートストラップサンプリング手順でシミュレートするグランドトゥルースの母集団分布として使用します。この分布を区分し、各区分の相対度数を算出します。これらの相対度数は、労働貢献価値の実証サンプルから(N)の規模のブートストラップサンプルを抽出するための再サンプリングの重みとして使用されます36。このプロセスを繰り返し、財務的貢献価値の実証サンプルから (0.1 N) のブートストラップサンプルを抽出します。 ここで仮定しているのは、オープンソースに労働力を提供している従業員を持つ組織の10%が、金銭的貢献も行っているというものです。 最後に、これらの分布の合計に対するブートストラップ推計値を組み合わせ、すべての OSS 貢献組織の年間総貢献価値の推計値を算出します。
36 具体的には、サイズ(N)のブートストラップサンプル(10,000)を抽出します。